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トランプの関税政策によってアメリカ経済は間違いなく混乱する

トランプは関税政策に夢中である。大統領の判断で関税をコロコロ変えられるということは知らなかった。そんな権限があるんだ、アメリカの大統領。しかし、トランプが関税になぜ、それだけ拘るかは分からない。


トランプは関税によって、アメリカの経済が復活できると考えている。特に製鉄業とか自動車製造業などの重工業が復活すると思っているのだ。しかし、そもそもアメリカでそのような重工業が成立しないのか、を考えれば、関税という政策に意味が無いどころか、むしろアメリカ経済をさらに窮地に陥れる愚策であることが理解できる。


なぜ、アメリカやドイツ、日本の製鉄業が衰退したのか。それは、インドや中国でより安く鉄をつくれるようになってしまっているからだ。それでは、なぜ、そのようなことが起きたのか、というと基本、人件費をはじめとした諸費用が安いためである。そして、これらの後進国と先進国との技術の差もどんどんと縮まってきている。というか、アメリカの製鉄業が中国のそれよりも技術的に進んでいるということはもはやないのではと思われる。そうであれば、なぜアメリカで鉄をつくる必要性はほとんどなくなる。中国やインドから輸入する鉄に関税をかければ、それはそのままアメリカでつくる多くのものが高くなるだけだ。もちろん、製鉄業の雇用を絶対、守らなければならないというのであれば話は別である。欧州が農産物に関税をかけることはそれなりに意味があるし、私は日本の農業を維持するために関税を設けることには品目によるが概ね賛成である。しかし、そこまでして製鉄業を守る必要があるのか。そして、アメリカではもはや優れた鉄もできなくなっているので、出来の悪い鉄を高価格で買うことになる。おそらく、生産量も需要に追いつかないので、他の産業にもマイナスの影響を及ぼすであろう。まあ、鉄は国家、という言葉があるので、それに拘る政策的考えはあるのかもしれないが、まじですか、と思わざるを得ない。


とはいえ、鉄はまだ多少はその正当性を主張する余地はあるかもしれない。まったく分からないのはアルミニウムである。というのも、アメリカはアルミニウムをほとんど産出せず、そのほとんどをカナダに依存しているからだ。これは日本が石油に関税をかけることと同じで、まったく意味が無い。守るべき自国の産業がないからだ。もう、ディール(取引)の基本中の基本が分かってない。もちろん、カナダを51州にしようと主張しているトランプであるから、戦争をするためにイチャモンを付けているだけかもしれない。アルミニウムがないから侵略する、みたいな帝国主義的な考えをもとにそのような行動をしているのかもしれない。しかし、戦争をするにも多少はアルミニウムが必要だろうから、そのような戦略で動いているとは思えない。


欧州のワインに関税、というのは自国のワイン産業を守るためには意味があるかもしれない。トランプ自身もワインを製造している(いた?過去形?)から、その恩恵を受けるであろう。しかし、アメリカ人のワインの需要をアメリカ産のワインの供給だけでは追いつけないだろうから、これはワイン価格の上昇をもたらすであろう。ワイン産業にはいいかもしれないが、消費者は溜まったものではない。


一方で関税をかけると他国もそれに対抗する。現在はカナダや欧州がアメリカ産のバーボンに関税をかけ、アメリカ産ボイコットをしているため、それが売れずに困窮している。ワインをつくっているのはカリフォルニア州やオレゴン州といったブルー・ステート(民主党支持)であるのに対して、バーボンをつくっているのはケンタッキー州やテネシー州といったレッド・ステート(共和党支持)である。政治的にも賢明とはいえない。


そして、何より問題となるのは、トランプがコロコロと猫の目のように関税政策を変えることである。前日になって取り消したり、税率を上げたりしている。確かに、このトランプの気まぐれによって、市場は右往左往する。それをトランプは楽しんでいるように思えるが、株式市場が一番、嫌うことは将来が見えないことである。現在の株の下落は、関税政策そのものより、将来が不透明なことである。これは、トランプが負うべき、トランプがもたらしたトランプ不況である。


トランプは関税をかけるというと他国は慌てて、自分の言うことを聞くと思っているようだが、例えばアルミニウム(そのほとんどをカナダから輸入)やアボカド(そのほとんどをメキシコから輸入)のように守るべき自国の産業がない品目に関税をかけて、それで交渉を勝ち取れると思うのはあまりにも愚かだ。そして、その政策を後押ししているジャーナリストとかもいたりするので、本当、話にならない。まあ、アメリカはこれからしばらくは衰退していくであろう。心配なのは、日本のアホ政治家どもがこのトランプに振り回されて、日本にも損害をもたらすことである。それだけは本当にやめてもらいたい。

 
 
 

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